長崎の迷蝶

 本来の分布域が遠く離れた南や北の地にあって,その土地には生息していない昆虫(トンボ,チョウ,ガなど)が風に運ばれてやって来ることがあります.これらの昆虫のうち,チョウ類は「迷蝶」とよばれています.長崎県では,これまでに114種のチョウが確認されており,このうち迷蝶は7科26種が記録されています(表参照).
 迷蝶は初夏から秋にかけて最も多く見られます.大半の種は偶然発見されるもので,食草がないため死んでしまう種や食草を発見して世代を交代させても,冬には死滅してしまう種がほとんどです.そんな中で定着したのがタテハモドキです.そして,ここ数年毎年飛来して世代を交代させているのがクロマダラソテツシジミです.確認例が多い種としては,メスアカムラサキ,アオタテハモドキ,リュウキュウムラサキ,ウスイロコノマチョウなどです.
 迷蝶は離島を含む県下全域で記録があります.長崎やその周辺では野母崎,金比羅山,岩屋山,長与,時津, 県民の森などで多くの記録があります.興味が湧いた人は,美しくて個性豊かな迷蝶を探してみてください.
 実は,2010年8月31日のこと,この昆虫図鑑をつくる作業中,長崎県本土では97年ぶりにツマムラサキマダラが確認されました.ツマムラサキマダラは,「長崎県の蝶」によると,1913年8月に堀川安市氏が大瀬戸町で採集して以来,全く記録がありませんでした.2010年は,その他にも,シロオビアゲハ,スジグロカバマダラなど,多くの迷蝶が県下各地で採集されました.

 

表 長崎県での迷蝶の種類(2010年現在)

1 マダラチョウ科

 

(1)カバマダラ
(2)スジグロカバマダラ
(3)リュウキュウアサギマダラ
(4)ツマムラサキマダラ
(5)タイワンアサギマダラ
(6)ウスコモンマダラ

2 ジャノメチョウ科

(7)ウスイロコノマチョウ

3 セセリチョウ科

(8)タイワンアオバセセリ
(9)オキナワビロウドセセリ

4 タテハチョウ科

 

 

(10)アオタテハモドキ
(11)リュウキュウムラサキ
(12)メスアカムラサキ
(13)タテハモドキ※(10年前に県央の唐比湿地に定着)
(14)ウラベニヒョウモン
(15)ヤエヤマムラサキ

5 アゲハチョウ科

(16)シロオビアゲハ
(17)ナガサキアゲハ(有尾型)

6 シロチョウ科

 

(18)チョウセンシロチョウ※(北方系の種)
(19)ウラナミシロチョウ
(20)ウスキシロチョウ
(21)ホシボシキチョウ

7 ジミチョウ科

(22)アマミウラナミシジミ
(23)オジロシジミ
(24)ルリウラナミシジミ
(25)タッパンルリシジミ
(26)クロマダラソテツシジミ※(県本土で4年前から毎年繁殖)

説明:田中 清

 

タテハモドキ

 

アオタテハモドキ

 

ナガサキアゲハ

 

ナガサキアゲハ

 

シロオビアゲハ

 

カバマダラ

 

スジグロカバマダラ

 

ツマムラサキマダラ

 

リュウキュウアサギマダラ

 

クロマダラソテツシジミ

 

ウスキシロチョウ

 

写真:田中 清,山口 浩司

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