対馬は玄界灘(九州本土から約130km,韓国から約50㎞)に浮かぶ南北82km,東西18kmの細長い島です.面積は約700km2で約88%が山林で,植林地もありますが,照葉樹林,夏緑樹林が多く残っています.海岸は多くの場所でリアス式海岸が発達しています.主な産業は漁業,林業,鉱業(陶石,硯石),農業などで人口は約34,100人です.動植物は大陸系の種や固有種が多く,特に昆虫は本土では見られない種が数多く生息しています.このように,生物に関心がある人であれば,一度は訪れて見たい島でもあります.
浅茅湾(あそうわん)
エノキの大木
対馬までは,飛行機,ジェットホイル,フェリーの中から選択できますが,大きい島であるため調査をするにはフェリーで自家用車を運ぶかレンタカーを借りなければほとんど何もできません.また,昆虫の調査や採集は7月がベストです.
案内板(対馬空港)
海岸のジャージー牛(舟志)
今回の調査は8月末でした.この時期の調査はこれまでほとんど行われていません.どんな虫が捕れるのかと不安がありました.調査1日目は一時晴れ間もありましたが,その後は毎日雨が降って気温も低く,最悪のコンディションでした.
比田勝に宿泊して,周辺にフィットトラップ,羽毛トラップを仕掛け,三根の民家横に積まれた薪を調べて甲虫を採集しました.ユクミ橋付近にベートトラップを設置.そして夜間は山田山と飼所・舟志林道でナイター(夜間採集)を行いました.また,ツシマジカが相当増えているようで,林縁や林床には下草がほとんどない地域が散見され,山が荒れているように感じました.また,夜間にも多くのシカを目撃しました.
フィットトラップ
ベイトトラップ
成果としては,数は少なかったのですが,甲虫では,ツシマヒラタクワガタ,キンオニクワガタ,ヒメダイコクコガネ,ツシマカブリモドキ,チョウセンシロカミキリ,オオモンキゴミムシダマシ,タイショウオオキノコムシ,シナハナムグリなど対馬を代表する種がなんとか捕れました.特に鱗翅目ではオニベニシタバ1頭,オオシロシタバは2頭も捕れ,同行していた柴原克己先生もびっくり,そして大喜びでした.
10月にはアキマドボタル,チョウセンケナガニイニイ,糞虫類がシーズンになります.また,鱗翅目はフユシャクなどの採集記録があり,年間を通じて色々な種類が捕れそうです.
ナイター(夜間採集)
羽毛トラップ
オオシロシタバ
オニベニシタバ
ヒメダイコクコガネ
ヒメダイコクコガネ ♂
チョウセンシロカミキリ
キンオニクワガタ
キンオニクワガタ
ミンミンゼミ ♂