高校理科教育における走査型電子顕微鏡の意義と活用例
研究要旨
ゆらい,児童生徒が自然科学(理科)に興味をもつ機会が減少し,理科ばなれ,あるいは理系の人財が育ちにくくなっている状況は,日本のみならず先進国に共通する社会課題といえる。関連企業にとっても,将来の研究開発を担うすぐれた人材育成への貢献は,重要なテーマとなっている。
日立ハイテクグループでは,「質の高い教育をみんなに」を目標のひとつに掲げ,自社製品である卓上型電子顕微鏡(Miniscope®)を活用した理科教育支援活動を継続しているが,国内に留まらず,海外拠点を中心に海外 30 ヶ国(と台湾)においても日々実施されており,世界中の子どもたちから驚きや喜びの声が届いている(cf. https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/science-edu/)。また,長年にわたる本活動をきっかけに,科学者を目指すようになった生徒たちも数多い。
上記のような活動の一環として,日立ハイテクでは国内のいくつかの高等学校に対し,卓上型電顕を毎年一定期間無償貸与する事業を介し,自然科学教育の深化・向上をはかっている。長年にわたってスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されている長崎県立長崎西高等学校においては,2020 年度より課題探究型自然科学系授業(実習)の中,年間のべ400 余名の生徒を対象に,走査型電子顕微鏡を駆使した理科教育を施している。当校では,少なくとも 1 年生全員(280 名前後)が受講するため,昨 2023 年度より,すべての在校生が走査電顕に関する基礎知識を有するに至っている。おそらく,わが国の高等学校では,他に類を見ない実例といえよう。
本 2024 年度は,受講生徒へのさらなる教育効果を期待し,教育実習のため母校(長崎西高校)に 2 週間ほど戻ってきた筆者ら(山佐・長島)卒業生(学部 4 回生)が,検視材料や理想的な授業方法を模索・研究した。本文では,実際に卓上型走査電子顕微鏡(Miniscope TM4000 PlusII;右図)をフル活用した授業例を紹介するとともに,インパクトのある教材やサンプル作成法等々についても提案したい。
著者
山佐 啓斗・長島 帆花・寺田 大平・安永 智秀・長嶋 哲也
Title
Significance and impact of ‘Tabletop Scanning Electron Microscope (Hitachi Miniscope ®)’ effectively applied to high school scientific education
Author
Keito Yamasa, Honoka Nagashima, Daihei Terada, Tomohide Yasunaga & Tetsuya Nagashima