Vol.1 No.3

ソーラーセイルによる静止軌道輸送システム

Vol.1 No.3
研究要旨

 CubeSat は 10 cm 立方,1 kg 以下の超小型衛星で,短期間かつ低コストで開発できることから,新規技術の迅速な実証試験や宇宙ビジネス向けの資材として脚光を浴びている(中須賀 2021)。さらなる小型軽量化が追求されており,付属機器のよりコンパクトな搭載技術開発も欠かせない(保坂ら 2022)。

 地震発生の前駆現象として,岩石の破壊を起源とするマイクロ波放射が示唆されており,先行研究では,高度 700 km を周回する人工衛星に搭載されたマイクロ波放射計で検出が可能であることが示されている(高野ら 2007)。マイクロ波放射計を備えた CubeSat を静止軌道上に配置できれば,マイクロ波の異常を即座に日本へ伝達できる地震予報専用のセンサーとしての活用ができる。そこで本研究では,1U サイズの CubeSat に,電気推進エンジンと畳んだソーラーセイルからなる 2U サイズの輸送衛星を取り付けた計 3U サイズの衛星を,高度400km,軌道傾斜角51.6°の国際宇宙ステーションより放出した後,静止軌道まで輸送する方法を模索した。

 本文では,大きなソーラーセイルを 1U サイズに格納することを目的とした,独自のソーラーセイルの折り畳み方法を考案したので報告する。さらに,スピン安定方式のため急な姿勢変更ができないという問題を解決すべく,「両面」ソーラーセイルの使用を提案したい。高度 700 km までは大気抵抗が無視できないことから,まず電気推進エンジンを用い,十分に上昇した後「両面」ソーラーセイルを展開,効率よく加速し,2.44 年で静止軌道到達をめざす。

著者

岩﨑 陽・重野 修太朗・甲斐田 颯哉・宮﨑 陽也・藤田 晃成・麻生 賢太郎・田中 潤

Title

A transportation system to the geosynchronous equatorial orbit (GEO) utilizing solar sail

Abstract

In order to establish earthquake forecasting system using CubeSats on geosynchronous equatorial orbit (GEO), we herein propose a 2U-sized transport satellite which can reach GEO by itself after being placed into low earth orbit (LEO) from the International Space Station. Because of atmospheric drag up to an altitude of 700 km, an electric propulsion engine must be used until ‘double-sided’ solar sails will be deployed for adequate photon acceleration. Eventually, the CubeSat is estimated to reach GEO in 2.44 years. For this proposal, we improve a unique folding method enabling the sail to be stowed in a 1U size.

Author

Iwasaki H., Shigeno S., Kaida S., Miyazaki H., Fujita A., Aso K. & Tanaka J.